2008年4月18日金曜日

今週の倫理 (555号)より 閉塞に満ちた日常を感謝の心で打ち払う

現代日本を「うつの時代」と評することがあります。うつ病の総患者数と入院患者数を足した総患者数は、一〇〇万人を超えているという報告もあります。

 経営者Aさんは、仕事が順調になるに従い、妻をないがしろにして飲み歩き、わがまま放題の生活を送るようになりました。そんな自己中心な生活が精神のバランスにまで及び、仕事はままならなくなり、人間嫌いに陥ったのです。ついには「うつ病」と診断され、何をする気になれず、〈もう死んでしまおう〉〈このままでは妻に逃げられてしまう〉といったマイナスイメージだけが心の中を占めるようになりました。

 ちょうどその頃、友人から「倫理」の存在を教えられ、これまでの生活の間違いを振り返るよい機会を得ました。〈ああ、これまでどれほど妻にわがままを言い、苦労をかけてきたことだろう〉と、結婚以来初めて妻の身に立ち、妻の本当の幸せを思い浮かべるようになりました。妻と心が通い合い始めると共に、不思議と仕事を含めた様々なことが順調になり、今では病を患ったことが嘘のように完治しています。

 うつ病とは、心が病んで、本来の力が出せなくなりますが、どうしてそのような状態に陥るのでしょうか?
『万人幸福の栞』に「病気の原因になっている心のまちがいは、生活(家庭や仕事)の暗影(不自然さ)が、自分の肉体に赤信号としてあらわれている」とあります。うつ病の原因の一つに、Aさんのように自分のわがままで相手(妻など)を責め嫌うことにより、人との接し方や人からのアプローチに対する受け止め方がヘタになることがあります。

何事でも「そのまま」に受けることは、自己の力をおおいに出す秘訣ですが、苦手や嫌いなどの理由で相手を避け、その人のことを差し引いて受け止めると、それに比例して持てる力も差し引かれ、それが心のモヤモヤ感を呼ぶのです。

 そして、もう一つのうつの要因として考えられることに、自己が「その時その場」に立って(合って)いないことが挙げられます。私たち一個の人間は、同一人物でありながら、社長役、夫役、子供役、幹事役等々、さまざまに立場を変えて日々生活を送っています。  

 与えられたその時々の立場を自覚し、配役にすなおになって行動するとき、その場にフィットした力が出せます。しかし逆に、立場を忘れたり、間違った配役を演じるとき、それは自己を見失った状況といえ、力が十分に出せない状態です。その状態が繰り返されると、心を病んでしまうことにもつながります。

 現代において、うつを他人事と捉えるだけでは惜しいと言わざるを得ません。うつと診断されないまでも、自己の持てる力を出し切れず、〈何か閉塞しているな〉と感じる時は、そこに受け止め方のまずさや立場の不自覚がないかを振り返ってみましょう。

閉塞感を打破するためのキーワードは、ズバリ「感謝」です。目の前の人や遭遇する事柄に対し、すなおに感謝できる人こそが自己の持てる力を最大限に発揮できるのです。「世の中、ありがたいなー」「嬉しいな、自分は」と深く思う心があるとき、モヤモヤ・イライラはきれいに吹き飛び、透明で爽快な視界が目の前に拓けるでしょう。

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