2009年3月13日金曜日

今週の倫理 (603号)より 能力を出し合い、不可能を可能にする


「知恵のある人 知恵を出す 金のある人 金を出す 物のある人 物を出す 命出す人 命出す 四つが組んで 頑張れば 世界の沙漠は 緑化する」
二〇〇四年二月二十四日、九十七歳で亡くなられた「沙漠開発の父」と呼ばれた故遠山正瑛鳥取大学名誉教授の言葉です。

氏は一九〇六年(明治三十九年)十二月十四日、山梨県の富士吉田市に生を享け、苦学の末に京都帝国大学農学部を卒業。鳥取農林学校(現・鳥取大学)に赴任し、砂丘研究と砂地での作物生産に取り組みました。しかしその道のりは険しく、担当者から「砂地で作物が出来るようになったら、太陽が西から昇る」と笑われたそうです。

その言葉に奮起して、「慌てない、焦らない、諦めない」を信条に日本で初めてスプリンクラーを導入し、長年の努力の末、砂地で長イモ、ラッキョウ、スイカなどの生産に成功したのです。また、退官後も砂丘の研究に取り組み、「沙漠開発は世界平和への道」と未来の食料事情と地球の沙漠化を憂え、中国の沙漠緑化活動を始めたのです。八十五歳の時でした。

場所は中国内モンゴルクブチ沙漠。その後、十五年間で東京ドーム四千個分、約三百万本の植林に成功し、現在でも毎年、日本の緑化ボランティアが植林活動を続けて、小規模ながら農業、畜産に成果をあげつつあります。

倫理研究所も一九九九年より同沙漠にて「地球倫理の森創成」として植林活動を続け、今年で十年目を迎えます。十年間で約千四百名の会員の方々が現地に赴いては汗を流し、植林本数は二十八万本を超えるまでになりました。そして、そこには昆虫や鳥が集まるようにさえなったのです。

氏は冒頭の言葉を「祈りから行へ―命捧げる男の詩」として語り、続けて「民族宗教貧困と 沙漠に嵐は 吹き荒れる 世界平和はいつの日か 祈り願いに 汗ながす 木を植え種まき つづければ 世界の沙漠は 緑化する」と祈りや願いをさらに一歩進めて実践実行しなければ何も変わらないと強調し、各人が持てる力、能力を出し合って協力すれば「不可能を可能にすることが出来る」と、その信念を披瀝しています。
ある企業では「知恵のあるもの知恵を出せ技術のあるもの技術を出せ 知恵も技術もないもの汗を出せ 知恵も技術も汗も出さないものはせめて笑顔を出せ 何も出さないものは去れ」とのモットーを掲げています。

「自分の能力、自分の個性、得意技は何か」「自分に出せるものは何か」「自分は何をやるべきか」を再度問い直し、それぞれが持てる力を発揮し協力することが総合力、組織力を高めることになります。
人の集まりが、いわゆる集団が組織として機能するためには目的・目標を明確にするとともに能力、役割を自覚することが重要です。現代社会は政治も経済も教育も家庭も企業も人の心も沙漠化しつつあります。「森」は一本一本の木の集まりであり、企業も一人ひとりの人の集まりです。森に生物が集まり自然を取り戻し、森としての全体の力を発揮するのと同様に、企業も社員の働きに応じて仕事が集まり、活力が増していくのです。

自分の持てる力を出し合って、「日本創生」を実現しようではありませんか。

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