2009年3月20日金曜日

今週の倫理 (604号)より 苦しいときこそ笑って生きる


大雪の積もった道を、気をつけて歩こうとすればするほど革靴がすべり、腰を打つはめになることがあります。それと同じように、トラブルや問題は、避けようとすればするほどついて廻ってくるものです。

とかく私たちは、トラブルや想定外の問題に直面すると、不足不満や愚痴をこぼしたり、責任の転嫁をしたくなりがちです。くさりきった気持ちのままであれば、神経はますます過敏になり、気持ちも暗くなるばかりです。

そのような時、そうした場面から一歩離れて自分を見つめ直してみる、普段以上に笑いやユーモアを生活に取り入れるように意識的に努めてみると、〈何でこんなことに、いつまでもクヨクヨしていたんだ!〉と、フッと開放されたような気持ちになれるものです。

また職場や家庭でも、誰かの笑い声が聞こえたりすると、周囲の人々はホッとするものです。自分も相手も緊張感がほぐれ、雰囲気が和みます。そんな時に会話が弾み、さらには、うまい具合に良いアイデアもパッと閃いてくる可能性が高まるのです。

 苦境を乗り越える方法として、それまで通りのやり方を続行し、努力一辺倒でいく方法もあるでしょうが、まずは心を平静に保ち、焦らず肚を据えて状況を受けとめ、見方を変えて解決の糸口を探ってみることも忘れてはなりません。

かつて、ヤマト運輸㈱の創業者・小倉昌男氏(一九二四~二〇〇五年)は、次のような言葉を遺しました。
「悪い循環から脱するには、全然別の場所に移り、まったく新しいところで仕事をしたらどうかと考えた」
 そもそも同社は、工場から店舗に荷物を届ける商業輸送をサービスの主力にしていました。しかし、労使協議のもつれや競合他社の出現により業績が悪化。設備投資にも出遅れた末に、苦境に陥っていきました。

 その状況を打開するため、小倉氏は「官」が使い勝手の悪いサービスを提供しているだけで競合となる民間企業が存在しなかった、小口荷物の配送に着目したのです。収益性を分析し、勝算があると判断した上で、新分野への進出を決断。それが「宅配便」という新市場を切り拓くことにつながったのです。

 苦境の打開策を見つけようと、情熱を燃やすことは必要なことです。しかし、夜も眠れないほどに不安や焦りを抱いたままでの状態が、ずっと続いていくのであればどうなるでしょう。やがては体調面や精神面にまで悪影響が及び、暮らしそのものが悪循環に陥ってしまいます。

大阪弁に「泣いている暇があったら、笑ろてこまして生きようやないか」という言葉があります。難しい状況に陥った時こそ、尻に付いた雪を払い、何事もなかったかのように笑って、今やれることに明るく朗らかに喜んで全力で取り組む。すなわち「緩急自在」の「緩」をつくる、その工夫を苦しいときこそ私たちは忘れてはならないのです。

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