2008年6月6日金曜日

今週の倫理 (562号)より 心ひとつになる時 社全体が輝きを増す

 時代の変化は、年々早まってきているようです。ひと昔といえば十年だったものが、現在では一年一昔となり、十年は大昔にさえ思えるほどです。この急激な変化の中、厳しい競争に勝ち残るためには、社長の人間力を中心に全社員が一丸となり、いかなる経営環境の変化にも対応できる組織力を持つことが大切です。

 中小企業の強み「三条件」としてよく聞くのが、「労使の一体感」「機動力」「マーケット感覚」です。

「労使の一体感」とは、いうまでもなく社長中心に全社員の一枚岩体制です。「機動力」は、即実行・即対応であり、徹底した顧客サービスなどです。「マーケット感覚」とは、顧客ニーズを肌で感じて、それに対応していくことでしょう。経営者の誰もが、この「三条件」を軸に、様々な経営危機を乗り越えて、今日の基盤を造ってきたわけです。

 ある地方で、民間車検工場中心に板金・塗装工場を経営するT社長は、「うちは、いかなる経営環境の中でも、勝ち残る自信がある」と言い切ります。その理由として、「顧客のために」を念頭に、親切・丁寧・真心のサービスを実行していることを挙げます。それも社長の命令や指示によるものでなく、社員各々が積極的に話し合いながら取り組んでいるというのですから、社長の自信も頷けます。

 社員の仕事は、始業時間前のミーティングから始まります。その日の仕事の確認をはじめ、予約客に対しては到着時間を見計らって入り口に立って迎える、帰りの際は出口まで行って丁寧に見送るなどまで話し合うのだそうです。また、その日のすべての仕事が終了しても、すぐに帰るのではなく、ミーティング通りに仕事が進められたかどうかを全員で反省します。良かった点は続行し、悪かった点は即座に改めるなどの努力を重ね、現在の「三条件」を満たす社風を作り上げてきたのです。

 同社には社員の応対力の高さがあります。待合室のみならず工場内がきちんと整理され、チリ一つありません。その待合室には飲み物が準備され、ゆっくりとくつろげるソファーもあるのです。さらに驚いたことに、その待合室から工場内がすべて見えるようになっているのです。客の誰もが、自分の愛車を大事に扱ってくれている様子を確認でき、嬉しくなるでしょう。あたかも工場内において、人と物とが一体となって、喜んで働いているかのようです。T社長は「私はただ、社会貢献を目的に経営を進める一方、社員の物心両面を高めることに努めてきただけです」と控えめです。

「事業の倫理」に、「『この仕事は、あくまで、世のため人のためにするのだ』という目的がはっきりと立って、いつまでもそれ(初志―創業精神)を貫きとおす、これが繁栄の秘訣である」とあります。さらに「一つ心にかたまって、思いきって行なうとき、ここに奇蹟が現われる」とも教えています。これこそが、経営者の人間力を高める大きなポイントであり、また社員が心一つになって顧客志向の実践に向かう不動の柱となるものなのです。

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