2008年7月4日金曜日

今週の倫理 (566号)より 両親との関係が人間関係の根本

先日起きた秋葉原での連続殺傷事件についての報道でもクローズアップされていましたが、人との絆が薄れ、孤独になるとエゴが増長し、物事を正しく見られなくなります。一方、人と人との絆が強まることで、自分の周囲に様々なよい流れを作ることが出来ます。人は人と交わることによって本当の人になるのです。

 親子関係で問題を抱えていたA氏は、子供の頃は可愛かった長男に対して、「もうこの子はいないほうが、我が家は幸せになるのではないだろうか。幸いにも次男がいることだし、長男はどこかに出て行ってくれないものだろうか」と真剣に思うようになりました。

 この時、A氏の夫婦中もまた冷えていました。夫婦として一緒に住んでいるものの、ただ同居しているだけといった関係でした。さらには、長年の懸案事項であった両親との関係も未解決のままで、とくに父に対してマイナスの感情がぬぐい去れないでいたのです。

そんなA氏の悩んでいる姿を見た友人が、A氏を地元のモーニングセミナーに誘いました。そこで「両親との関係の良し悪しがあらゆる人間関係の根本をなす」と知り、さっそく疎遠になっていた今は亡き父の墓参りに出向き、これまでの心間違いを詫びます。その後も定期的に墓参を続ける中で、それまでは嫌っていた元気な頃の父の言動は、実は自分たち兄弟への愛情の表われだったことに気づきます。

この気づきとほぼ時を同じくして、妻との関係も長男との関係も改善の方向に進み、今では夫婦関係はもとより、長男との関係も良くなり、家族としての幸せをしみじみと味わっています。 

 わずらわしさや苦手意識、また人の好き嫌いなどから、他人との絆が希薄になった状態は、自分では気づかないものの自己中心的な生き方になっています。そのあり方は、自分を守り、尊重するようで、実は自他の生命をも疎かにする行為となります。

 この私たちを取り巻く絆には、大きく分けて縦(上司・部下などの関係)と横(同僚・友人などの関係)という二種類の絆があります。この二種類の絆を共によくするには、わが両親との関係をより良くすることです。両親との関係を良くできる人は、自分の周囲に起こった出来事に対して、何を意味するか気づきやすくなります。

 自分の身に起こってくることは、苦しいこと(自分にとっては苦しい出来事)であっても、不必要なことは何一つなく、《全ての出来事には自分を成長させる何かの意味がある》ものです。
しかし、両親との関係がよくない場合は、様々な出来事に含まれる大切な意味に気づかず、見過ごしやすくなります。その出来事が苦しみ事ならば、単なる苦しみのままで終始し、せっかくの自己成長の機会を逃すことにもなります。

そこで両親との関係をよりよいものにする実践として、もしもこれまでに間違った感情を親に向けていたならば、A氏と同じように素直に詫びることです。両親の現在の生存の有無に関わらず、頻繁に顔を見せる、(墓前に)報告をするなど、できる限り喜んでいただける精一杯の努力と実践を継続していきたいものです。  

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