2008年9月19日金曜日

今週の倫理 (578号)より 災いを踏み台に 人生再びの跳躍を

倫理法人会の行動哲学の一つに、「運命は自らまねき、境遇は自ら造る」という項目があります。強運も弱運もすべて自分自身が招いて造っていくものであるという考え方です。この行動哲学を実践究明した人物は世界中に数多く存在しますが、江戸時代中期に活躍した観相家で有名な水野南北もその中の一人です。

水野南北は一七六〇年に大阪の地に誕生しましたが、幼少の頃に父母と死別し、両親の愛を知らずに親族に育てられるという不幸な人生を味わいました。父母の死別という悲しみから徐々に私生活が乱れていき、10歳の頃より酒を覚えました。博打と喧嘩に明け暮れている最中、18歳にして悪事をはたらき投獄されましたが、牢内で人生を変える大きな気づきを与えられたのです。入牢してくる罪人と娑婆で働いている人の相貌に、著しい違いがあることを発見。しだいに南北は観相学に興味を持ち始めていきます。

 出牢後、大阪で名高い観相家を訪ねて自分の人相を見てもらったところ、「剣難の相であと一年の寿命」であることを宣告されてしまいます。愕然とした南北は助かる方法を問うたところ、出家が唯一の方法であると言われました。その後、禅寺を訪れ入門を請い、「一年間、麦と大豆だけの食生活を続けることができれば入門を許そう」と住職から課題を与えられました。

 南北は助かりたい一心で好きな酒も断ち、約束どおり忠実に実践を一年間続けたのです。そして再度、観相家を訪ねたところ、「剣難の相が消えているが、何か大きな功徳を積んだであろう」と言われ、食生活を変えたことを話しました。そして「節食したことが天地への陰徳積みになったのであろう」と言われたことがきっかけで、観相家の道を志すことになりました。

 その後、髪床屋、風呂屋、火葬場と働きながら、人相や全身の相と人の運命との関連について研究を重ねました。そしてついには「だまって座ればピタリと当たる」と評判になり、多くの門弟を抱える大観相家の地位を獲得しました。南北は強運の人生を歩む秘訣は食の節制にあるとし、その要点を次のように語っています。

①少食の者は、不吉な人相であっても運勢は吉であり早死にしない

②常に大食暴食の者は、吉相であっても運勢は一定しない

③常に身の程以上の美食をしている者は、人相が吉でも運勢は凶

④貧乏人で美食する者は、働いても働いても楽にならず、一生苦労する

⑤常に自分の生活水準より低い粗食をしている者は、貧相であってもいずれは財を成し、長寿を得て晩年は楽になる

⑥食事時間が不規則な者は、吉相でも凶

⑦少食の者には、死病の苦しみや長患いがない

⑧怠け者でずるく酒肉を楽しんで精進しない者には、成功はない

⑨人格は飲食の慎みによって決まる。

 食の節制以外にも強運の秘訣として

①毎朝昇る太陽を拝む

②早寝早起き

③衣服や住まいも贅沢すぎるものは大凶

④倹約は吉であるがケチは凶、

などといったことも挙げています。

 運命も境遇も自身の努力精進しだいで変わっていくことを自覚し、強運の人生を歩んでいくコツを常日頃から実践していきたいものです。

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