2008年9月12日金曜日

今週の倫理 (577号)より 人生山あり谷あり プラス発想で成功を

「人間万事塞翁が馬」。これは中国の『淮南子(えなんじ)』に書かれている故事で、「人間」は「ジンカン=世間」と解釈される説と「ニンゲン=個人」と解釈される説がありますが、主に次のような内容です。

中国の北方の国に老人が住んでいました。ある日、この老人が飼っていた馬が逃げ出してしまいました。当時の馬は交通の手段でもあり、人々の生活にとって重要な位置にあったのです。

周囲は「かわいそうに」と気の毒がりましたが、老人は「馬が逃げたことが幸福につながるかもしれない」と
言います。そしてその言葉通り、逃げた馬が隣の国から立派な馬を伴って帰ってきたのです。周囲の人々は喜んでお祝いまでしました。

しかし、老人は「これが禍につながるかもしれない」と言います。しばらくして老人の息子がその馬から落ちて足を骨折してしまいました。周囲の人々は「あの馬さえいなければ、こんな不幸には見舞われなかったのに」と嘆きましたが、老人は「これが幸せにつながるかもしれない」と平然として言ったのです。

 その後、隣の国と戦争になりました。老人の住む国の健康な若者の多くは戦いに駆り出され、戦死しました。しかし、老人の息子は足が悪かったため戦いに行かずに生き残ったのです。
人生は長い目で見ないと幸・不幸、成功・失敗は分かりません。「禍福は糾える縄の如し」の教えの如く、悪いことがあっても希望を失わず、良いことがあっても有頂天にならずに気を引き締める必要があります。
石材店を営むI氏は、二十年ほど前に友人の三千万円の保証で債務を引き受け、公務員としてどん底の生活を強いられるようになりました。給与も抑えられ、生活費は五万円足らず。家を売り払い、家族もバラバラになってしまったのです。

路頭に迷ったI氏は倫理指導を受けました。すると「お墓参りに行きなさい」と言われたのです。借金と墓参は理屈として結びつかなかった氏でしたが、藁にもすがる思いでお墓参りを続けました。何日か経った時、亡き父のことが思い出され、父に対する思いが募り、涙が出て仕方ありませんでした。

そんなある日、墓地で「墓石クリーニング」をしている人から「おたくも墓石クリーニングをしませんか」と勧められたのです。しかし、その費用がありません。〈そうだ、自分で掃除をしよう〉と思い立ち、お墓の掃除をはじめました。それが思いのほか面白く、「よし、この仕事を独立させよう」と決心したのです。その後、事業は順調に発展し、今では石材店として工場まで持つようになりました。

「どん底の生活」が「墓参」の実践に結びつき、その墓参により「自分が変わり」、「よい出会い」があり、石材店を営む「縁」を結んでくれたのです。結局、振り返って見れば「どん底の生活」が事業独立のきっかけとなったのです。

長い人生、道のりは山あり谷ありです。苦しくてもプラス発想で前向きに、良いことがあっても喜びすぎず、さらに気を引き締めて日々の実践を疎かにせず、最後には成功を手にしたいものです。

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