2007年9月19日水曜日

今週の倫理(525号)より 学ぶべきは先代敬の心が社を伸ばす

中小企業にとっての深刻な問題の一つに、後継者問題があります。事業を創業した多くの経営者が、現在、世代交代期を迎えていますが、経営を譲りたいと思っても、後継者がいない場合も少なくないのです。
中小企業庁のアンケート調査では、約五割の企業で後継者がいないといいます。こうした背景には、若者に興味深い業種の増加や、技術革新・グローバル化・少子高齢化といった厳しい環境の中、後継者には高い資質が要求される、などがあるようです。
 確かに、二代目と目される人たちからは、「父親の会社に興味はないし、苦労もしたくない」「現在の社員の上に立って、会社をリードしていく自信はない」などの声を聞くことも少なくありません。しかしこれらの人の多くが、創始者としての父親の生き方やこれまでの経営経過を、ほとんど知らないのです。
仮にそれらを知れば、父親の仕事に対する興味も湧いてきますし、後継者としての自信も出てくるでしょう。これまで長い期間、経営者としての父親の下で育ってきたことでもあり、父親が造りあげてきた会社の経営資質は、すでに備わっているはずです。ただそれを、どうしたら自覚できるかの問題なのです。
 ある地方都市の寝具製造販売会社に、二代目を約束された専務がいました。大学を卒業して、大手の同業他社で五年ほど働いた後、父親が経営する会社に帰って来ました。入社して専務職を受けるまでは、後継者としての定まった道を、何ら疑問を持つことなく受け入れてきました。仕事はできるタイプで、先輩や仲間からの評価も高く、本人も後継者としての自信と自覚は十分にできていました。
 専務となって間もなく、後継へ向けた下地作りとして、いろいろなセミナーを受けることにしました。しかし「リーダーシップのあり方」「社長の人間力」「活力組織の社長学」など、社長の重責を認識するごとに芽生えてきた自信が潰えていったのです。
 ちょうどその頃、誘われて参加したのが「経営者モーニングセミナー」でした。これまでに聞いたことのない切り口で、人の上に立つ者の心のあり方に接したのです。
 セミナー後、個人的に相談を願い出ました。講師は「社長学を学ぶことは大切だけれど、それは一般論でしょう。あなたが学ぶべき社長学の先生は、先代であるお父さんですよ。まず為すべきは、先代を尊敬する実践に励むことです。それには経営者として父親としての先代をよく知ることです。自分の人生を先代の目を通して振り返るようにしてください」と言われたのです。
さっそく、その日から実践に取り組みました。すると、これまで各種セミナーで学んだことも併せて理解できるようになり、すっかり自信を取り戻せたのです。
 自己啓発は、感謝の実践によって、生じるものです。私たちは誰もが、共に生活する中で、親の持っている能力を得ていることを忘れてはなりません。その能力を発揮できるか否かは、その恩を自覚して感謝できるかどうかにかかっているのです。

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