2008年8月15日金曜日

今週の倫理 (573号)より 物の本質を知り愛し抜く生活を

原油高にはじまる原材料の高騰が、様々な製品の値上がりを招いています。
原料が上がれば、その分を商品価格に転嫁できればいいようなものですが、景気低迷する中ではそうもいかない企業が少なくないようです。価格を維持し続ければ利益率は明らかに下がりますし、逆に価格を上げれば顧客離れは否めません。そして、その結果として倒産する企業が、ここ数年加速度的に増加していると言われます。

 そこで各企業では、様々な価格戦略を立て、この難局打開のための取り組みを進めているのが実情です。ある企業では、これまでの生産工程における人・物・時間などの無駄を徹底的に省いて、商品価格への転嫁を極力避けるよう努めています。また商品価格の値上がりを容認してもらうべく、顧客の声を集める仕組みを作って評価を高めることに、全社員で取り組んでいる企業もあります。ともあれ、それぞれの取り組みが、確実な成果を得られるように願うばかりです。

 ただし、ここで忘れてならないのは、原材料や機械そして商品といった「物に対する心の有りよう」の問題です。経営的には、利益を中心において、物をどのように扱っていくかということになりますが、実際に仕事に携わる段階では、「物の本質」を明らかにした働きでなければなりません。

「物の本質」とは何か。それは「生きている」ということです。原材料といい、それを加工する設備や機械といい、一切の物が人と同じように生きているのです。だから、それらの物に携わる人の心の有りようが、生産工程をはじめ、商品の販売に至るまで、大きな関わりを持っているわけです。

 よく「生産性は態度なり」と言われますが、生産性の高い企業では、人のみならず物に対する心の有りようが非常に高いことを容易に想像できます。実際に、こうした企業を訪問して感じることは、働く人と機械とがあたかも一体となって、製品を生みだしているかのように見受けられることです。さらによく観察すると、設備や機械の操作は丁寧で、原材料や製品を実に大事に扱っているのです。工場内は、清掃は行き届いて清潔感に溢れ、設備や機械は磨き上げられ、小物類の整理整頓もキチッとしているのには驚かされます。このような企業では、原材料を無駄にすることもなく、不良品もほとんど出ないということです。

「事実、どんな物質でも、いやしくも人と関係のある物は、人と同じように生きており、知恵もあり情けもあるもので、まるで人間と変わりのない、むしろそれ以上の賢さ精密さをもって生存している。それで、物を愛すれば愛するだけ、その人のために働き、いじめればいじめただけ、人にたてつき、くってかかる」(『人類の朝光』P185)

 改めて物との関わりを振り返ってみれば、いちいち納得のいく教えではありませんか。今あるすべての物は生きていると知り、前述のように実践していくことで、新たな経営環境を切り開いていきましょう。

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