2009年5月22日金曜日

今週の倫理 (613号)より 美しく勝つために人的な質の向上を


第八十一回選抜高校野球において、岩手県代表の花巻東高等学校が準優勝の栄冠に輝きました。緊張や劣勢の状況にもかかわらず、のびのびとプレーするその姿は、多くの人々に感動を与えました。

就任後八年目の佐々木洋監督は、野球人生後の生き方を見据え、「野球選手」ではなく、「野球もできる立派な社会人」を育てることをモットーとして、生活態度重視の人間教育に力点を置いてきました。

その理念は、監督が野球人生の中でつかんだ信念でもありました。野球で生きていけるのは一握りの人間であり、学生時代に花形だった球児が人生を踏み外す場面を見て、〈勝つための野球だけではいけない。野球を通して、社会に出てからも仕事に通じる人間を育てよう〉と決心し、私生活にまで踏み込んだ指導を行ないました。

ミーティングでは、野球の技術よりも先に「食事は静かに」「ごみの片付け方が汚い」など、生活態度全般の指導に重点を置いた結果、次第に自発的に野球を考える集団に変化していったと語っています。目指すべき「日本一」は、全国制覇の意味だけではなく練習態度にもあるとし、「美しく勝つ」ことをチームの合言葉にもしています。

川村主将の「勝つ自信があるのではなく、自分たちがやってきたことに自信がある」との言葉には、人間教育によって築かれた自律力の高さを垣間見ることができます。

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時代がどのように移り変わっても、企業における人材育成は、大きな課題の一つと言っていいでしょう。技術面における向上は、様々な研修や教育によって比較的効果を上げますが、人間性に関わる心の教育は難しいとされます。

では、どうするか。倫理では「心は形に表われる」として、日常生活の基本動作(挨拶・姿勢・返事)や後始末などの実践を継続してすることが、人間力を磨くことにつながると学びます。また日本文化に見る「道」において、型を学び、礼節を尽くすことが精神的修養に大いにつながることを諭していることからも、形が心に及ぼす影響がうかがえます。

歴史を見ても、藩の建て直し等に活躍した上杉鷹山や二宮尊徳は、単なる経営指導だけではなく、藩士らの日常生活にまで踏み込んだ人間教育を行なっているのです。しかし現実として、社員の日常生活にまで踏み込んで教育をすることは、個々人のプライベートな問題が横たわっているため、広く浸透するまで行なうのはなかなか難しいといえましょう。

そこで「朝礼」の登場です。倫理法人会では教育の場として、基本動作の習得や目的意識の確認をし、人的な質の向上を目指すべく「活力朝礼」を推進しています。朝礼は毎日行なうもののため、その効果は絶大であり、人間教育の面において、しかるべき成果を収めることができます。

企業の活性化には、専門知識や技術の向上もさることながら、その根底となる「人」の部分を欠かすことはできません。技術革新と人間改革の両輪により、心技ともに真の強者として「美しく勝つ」ために、社員一丸となって経営を進めていきましょう。

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