2009年7月10日金曜日

今週の倫理 (620号)より トップの責任は重い 全ては自身の肩にあり


経営コンサルタントО氏の顧問先のひとつにK製菓があります。このK製菓とは永い付き合いで、K製菓の発展と共にО氏の事務所も大きくなりました。創業時のK製菓は人も物も金も無く、当然ながら信用も実績も無く、あるのは社長のヤル気と夢だけ。いつ潰れてもおかしくない中、数多くの危機を飛躍のバネにして今日まで存続してきました。

 創業八年目を迎えた頃、たまたま売り出した新商品が爆発的に売れ、それまで零細企業であったK製菓を中堅企業へと押し上げていきました。今までの設備では注文に追いつかず、工場の生産ラインを増やしに増やし、拡張に拡張を重ねていったのです。

 急激に拡大路線を走るようになったため、創業時の生え抜き社員だけでは人手が足りず、毎日のように中途採用を繰り返し、ともかくも熱気のある会社になったのです。
 そのような中で問題が起きました。大手から中途採用で引き抜き、営業部長のポストに就いた人物が、お客様から集金した150万円のお金を着服しようとしたのです。 帳簿と手持ちの現金をつき合わせたところ、150万円のお金が合いません。いろいろ考えたあげく、営業部長に「集金して出し忘れている金はないか」と質したところ、三日後に「鞄の奥にしまい込んで忘れていた」と言って持ってきたというのです。
О氏は後日、社長よりその話を聞かされ、即座に「社長、営業部長に対してどのような処置を取られたのですか」と尋ねたところ、社長は「人間は時々間違いをやるが、誤解されるようなことはするなと厳しく注意した。本人もいたく反省をしているので、今まで通り働いてもらっている」と言うのです。

 О氏は「今回の件は出来心ではなく、明らかに確信犯です。即座に本人に辞表を書かせるように」とアドバイスしました。しかし社長は「Оさん、一度の失敗でそれはないだろう」と逆に言い返されたのでした。

 それから三年後、同じ営業部長が1600万円の使い込みをしたのです。社長は「恩をあだで返しやがって」と声を荒らげ、怒鳴り散らし、警察に突き出せと騒ぎ立てました。

 この話を小耳にはさんだО氏は、さっそく社長のところへ出向きました。「社長、営業部長のところへ詫びに行きましたか」と声をかけたところ、顔を真っ赤にして「何で俺が詫びるんだ。俺は被害者だ!」と叫ぶのです。

 そこでО氏は「確かにあなたは被害者ですが、1600万もの穴が空けられるまで気づかなかった、ずさんな経理システムの最高責任者でしょう。社長のあなたがしっかりしたシステムを構築してさえいれば、彼も罪を犯さずにすんだのに、ボンクラ社長のボンクラ会社に入社したために彼も罪人になった。まったく気の毒な話です」と言い切りました。

さらに「罪は罪として法で裁けばいいが、トップとしての自分が至らなかったことを詫びるのも、人のみちです」と諭したのです。 これを契機に、K製菓は名実ともに中堅企業にふさわしい会社になっていきました。
トップは企業内で起こる全ての事柄に対して、たとえ自分が指示・命令を出していなくとも、トップの自分に全責任があるという気概で取り組むことです。間違っても、他人のせい、社会のせいとして、自己の責任から逃げるようであってはならないのです。

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