2008年1月2日水曜日

今週の倫理 (540号)より 耳を、目を、傾けて夫婦の語らいを楽しもう

新年あけましておめでとうございます。


「男は一歩外に出れば七人の敵がいる」と言いますが、「家に帰れば八人目の、そして最も手強い敵がいる」という経営者も少なくないようです。家庭という心身のエネルギー補給基地が充分に機能していなければ、働きは不完全燃焼にならざるを得ません。
倫理法人会においては、自己の向上をはかるとともに愛和の家庭づくりを目標にしています。その実践の一つに挙げられるのが「妻の話をよく聞くこと」です。
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ある経営者夫人の会合で「夫に改めて欲しいことを一つだけ挙げるとしたら」という質問が投げかけられたところ、最も多く寄せられた回答が「話を聞いてくれないこと」でした。「人の話を聞く」という行為は、簡単なようでいて、なかなか難しいものです。とりわけて家庭生活の場では、夫はよく聞いているつもりでも、妻に言わせれば「全然聞いてくれない」という不満の種となり、それが重なることから次第に夫婦の心が離れていくケースが多いのです。
 A氏は「話は耳だけで聞くのではない」と教えられて以来、次の実践に取り組んでいます。新聞を開いている時やテレビのニュースを聞いている時に話しかけられると、新聞を閉じ、テレビを消し、妻に顔を向けて話を聞くようにしました。すると、それまで愚痴めいた言葉の多かった妻が、近頃では機嫌がよくなってきたといいます。
〈しっかりと目を見て、真剣に聴いてくれている〉という姿勢が、妻の心を変えたのでしょう。
日常交わされる「おはようございます」「おやすみなさい」「いただきます」「ごちそう様でした」「行って来ます」「ただいま」という挨拶や感謝の言葉も、相手を見て言うことです。「夫婦は空気のような存在」と言われます。身近な存在だけに、ややもすると対応がなおざりになってしまうのです。
会話を通して連帯感を高めるポイントに、「目を見る」「うなずく」が挙げられますが、「合わせる」ことも肝要です。数学の世界では「1+1=2」ですが、人間同士ではそうなるとは限りません。声をかけ合い、心を一つにすることにより、二人分の力が、連帯感の高まりによってそれ以上の力として発揮されるのです。
歌人の俵万智さんの作品に「『寒いね』と話しかければ『寒いね』と答える人のいるあたたかさ」があります。
寒い日、「寒いね」という配偶者の言葉をそのまま受けて、「寒いね」と合わせる。そのことによって、二人の間にあたたかい何かが生まれてくる。〈受容されている〉という妻の安心感によって、夫の働きはより充実したものとなります。
「すべてが、夫婦の心が一致しているかいないか、にかかっている」(『万人幸福の栞』第五条)のです。
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日頃は何かと忙しく、すれ違いの多い夫婦でも、年末年始は一緒に過ごす時間が多くなるものです。この無二の好機に、夫婦の語らいを楽しみ、一年の労をねぎらいながら感謝して、新たな一歩を踏み出す英気を養っていきたいものです。
(短歌出典『サラダ記念日』・河出書房新社刊)

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