2008年11月21日金曜日

今週の倫理 (587号)より 誠心誠意の対応で会社の信用を得る

岐阜県倫理法人会の副会長で、中津川市倫理法人会会長の加藤景司氏(四六歳)は、平成二十年三月のある日、白濁水の入ったペットボトルを片手に、モーニングセミナー会場に入ってきました。

初めて外注に出した業社が、ワックスを剥ぐための剥離剤の残り水を側溝に流してしまい、それらが近くの池に流れ込んで白く濁り、近所の住民から苦情が出たのです。その水をセミナー終了後、朝一番に保健所で調べてもらうために持参してきたのです。

氏は金属製品製造業を営む(株)加藤製作所の代表取締役社長。同社は、鍛冶屋の「かじ幸」として明治二十一年に創業して以来、一二〇年の歴史を誇る老舗企業でもあります。四代目として父親から事業を引き継ぎ、現在はプレス板金部品の総合加工メーカーとして、あらゆる材質の加工に幅広く対応しています。

例年、研修の一環として、自社の食堂フロアーのワックスがけは社員と一緒に行なうのですが、この時に限って外注に依頼したのです。その外注業社は、まだ独立したばかりでしたが、同じ勉強会の仲間ということで仕事を依頼したのです。通常、都市部では汚水を側溝に流しても浄化槽まで流れていくので問題はないはずでしたが、当地では一部が河川まで流れていく仕組みになっており、一~二キロメートル先の池が真っ白になって苦情が出てしまったのです。

このブラウザではこの画像を表示できない可能性があります。クレームが来た当初、「総務部長にでも任せておけばいいか」と一瞬考えましたが、最終責任は自分にあると自覚し、加藤氏が自ら対応しました。すると苦情を言ってきたのは地元の顔見知りの住人で、以前からこまめに地元の集まりで顔を繋いでいた人でした。思いもよらず、その人が汚水の流れるルートまで案内をしてくれ、お詫びに回る加藤氏を誘導するかのように、すべて付いて来てくれたのです。

加藤氏はその際、3つの気づきを得ます。

①住民との日頃のつながりは大切。

②トップは何があっても逃げられない。

③信用を築くには長い年月がかかるが、崩れるのは早い。

お詫びに回る中で、ある住民が教えてくれました。三十数年前に、同じように油の混ざった汚水が流れ、池の鯉が全滅してしまったことがあったというのです。今回は同じようなミスがあったにしても、深く反省して迅速な対応をしたことと、日ごろの人間関係を大切にしていたお陰で、被害も苦情も少なくて済んだということを実感した加藤氏です。

困難な状況からは、つい逃げ出したくなります。しかし起こってしまったものは仕方がありません。真正面からキッチリと受け止め、かつ誠心誠意対処することが、さらなる会社の信用と継続につながります。クレームが来た時こそ、企業の真価が問われるのです。逃げず、人に任せず、責任者たる人間がしっかりと対応しましょう。

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