2009年3月27日金曜日

今週の倫理 (605号)より 妻への感謝の念が経営安定の必須条件


経営者のHさんがF研究員の元を訪れました。「ここ一ヵ月半ほど便秘が続いています。病院で薬をもらい、浣腸もしていますが、いっこうに良くなりません」と言います。同研究員が「言葉の出し惜しみをしていませんか。特に一番身近な存在である奥様に」と指摘すると、思い当たるふしがあるのか、「そういえば妻に対し、感謝の言葉など伝えた記憶がありません」と、至らなさを素直に認めました。そこで「これからはどんな些細なことでも、必ず『ありがとう』という言葉を伝えてください」と念押ししました。

しばらくしてF研究員が経過を尋ねると、「お蔭様で妻に感謝の言葉を伝え始めたら、すぐに便通がありすっきりしました。これからも妻への感謝の言葉を忘れずに実践します」と笑顔で答えたのです。

経営者のTさんはある時、先輩から「奥さんを大事に思うなら、奥さんの名前を『さん付け』で呼んであげるといいよ」とアドバイスされました。Tさんは一瞬「ええっ」と思いましたが、振り返ってみると、結婚以来、妻のことを名前で、しかも「さん付け」で呼んだことなど一度もありませんでした。先輩から何度も念押しされ、深く期するところのあったTさんは、なんとか奥さんの名前を「さん付け」で呼ぼうと思いましたが、なかなか簡単に言えるものではありません。

そこでふと思ったのが、〈毎朝の恒例になっている妻との朝の散策の時ならば、なんとか言えるのではないか〉ということでした。そして、結婚以来初めて、歩きながらではありましたが、妻に「○○さん、おはようございます」と言うことができたのです。妻はその一言に涙を流して喜んでくれたといいますから、「さん付け」の効果は絶大でした。

経営者にとって、家庭生活の安泰は経営の必須条件です。その中でも夫婦がお互いに感謝し合いその絆を日々深めていくことはとても大切なことでしょう。しかし現実問題として、お互いの存在や働きそのものが当たり前になったり、時には不足不満を抱えたままいつのまにか諦めてしまったり、ひどい時にはお互いに無関心ということにさえ至ります。

結婚以来、妻に感謝の気持ちはありながらも、一度も「ありがとう」と言えなかった人がいました。あるとき、言葉に出して伝えることの大切さを痛感し、勇気を出して初めて妻に「ありがとう」と感謝の言葉を伝えることができました。

その喜びを、妻は「ありがとう そのひとことで いやされる」と川柳に表わし、夫はそのお返しに「ありがとう 妻にささげる プロポーズ」と綴りました。「ありがとう」の一言が夫婦の絆を一段と深めた一瞬でした。

私たちは今、改めて夫婦としての縁があったことの意味を噛み締め、お互いにその存在を感謝し、その思いを素直に表現できる人でありたいものです。

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