2009年6月5日金曜日

今週の倫理 (615号)より 社員は宝なり 喜働集団を育てよう


清掃業を営むY氏(59歳)は、倫理法人会へ平成元年に入会しました。早朝から熱心に勉強している経営者仲間に刺激を受け、〈よし! 自分もやってみよう〉と取り組み始めた頃、「経営者自らがトイレ磨きをするといいですよ」と言われました。「掃除は商売ですから事務員がやってくれています」と返すと、「あなたの心を磨くんですよ」と一喝されたのです。清掃を専門にしているY氏は大切なことを気づかされ、自分の天職としての新たな誇りが生まれたのです。
   
以来、『職場の教養』を使った朝礼や倫理実践によって多くを得たY氏は、その喜びを見知らぬ経営者にも伝えようと、仲間の先頭を切って今も走り回っています。氏は「つくづく普及は宝だと実感する」と言います。「訪問した会社での応対や経営者の態度(挨拶、取次ぎ等々)を目の当たりにすると、良い点も悪い点もみんな自社の生きた教材となるんですよ」と強調します。

初めて訪問した会社でのこと。応対に出た女性社員の言葉遣いに違和感を覚えたY氏は、〈まずいなぁ、ウチにもこのタイプがいるかも…〉と思い、さっそく会社に連絡を入れて、「ウチは大丈夫か?」と確認したところ、そのようなことはないことが分かり、安堵したこともあるといいます。
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昭和57年、Y氏は米国へ行き、家事サービスの草分けであるA社の女性経営者に話を聞かせてもらいました。将来的な構想を抱いていた氏は、大きな収穫を得て帰国し、翌年には新しい事業として家事サービス業をスタートさせたのです。

氏は試行錯誤の末、どこにもないやり方とサービスを考案しました。女性スタッフ(若手の既婚者)三人一組で訪問し、先方の要望に応じて二時間みっちり清掃等を行なうシステムです。「見知らぬ他人が家に入るというと、不安やストレスを与えかねません。その点をクリアするために、清掃技術はもちろん、マナーをはじめとする人間磨きに絶えず留意しています」とY氏。

全スタッフと顔を合わせることがほとんどないY氏は、社長として全国八十ヵ所の拠点を持つ中で、現場のチーフ宛にメールを打って励ましています。そのメールの末尾に、「がんばってね」と結んでいました。スタッフたちは、雲の上の存在である社長からの激励メールに深く感激したそうです。

しかしある日、某幹部から「社長からのメールに大方は喜んでいますが、中にはそうでない者もいます」と囁かれました。男性であるY氏にはその理由が判らず、ある女性幹部に相談したところ「社長、一字を加えたら、いいと思います。〈がんばってね〉の「て」と「ね」のなかに、「る」を入れたら、きっと彼女たちは、受け容れてくれますよ」とのことでした。さっそくY氏は取り入れてみたところ、大きな効果があったというのです。こうした女性スタッフを会社の宝として大切に思うY氏のもとに、職場人としての意識を高め、期待に応えてくれる集団が出来上がっているのです。

経営者はスタッフに対し、様々な気配りをする必要があり、またそれに伴って気苦労もあります。しかし、それらを含めて「経営者の仕事」なのです。気配り・気苦労をいとわず、スタッフを社の宝として育てていくことを第一の仕事としましょう。

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