2008年2月11日月曜日

今週の倫理 (546号)より 誠心誠意取り組む時、日々の継続が力となる

九州のО市にあるM建設の朝は早い。
今朝も玄関前で点呼がとられ、活力あふれる朝礼が始まりました。流れるように切れ目なく朝礼が進められていき、そして最後に全員で誓いの言葉を斉唱した後、六班に分かれた社員がホウキやチリ取りを手に隊列を組み、会社を中心に五〇〇メートルほどの道路を清掃に取りかかります。この清掃は、十五年ほど前から始められたもので、今では街の風物になっています。
そんなM建設へある日、近くの自動車販売会社の社長と総務部長が手土産を提げて訪ねて来ました。応対に出たM社長に対し、販売会社の社長はこう切り出したのです。
「本日はあることを無心に参りました。私は二十数年間、貴社を折にふれて観察してきました。バブル前も崩壊後も、建設業界が苦しいといわれた時代も、着実に成長発展されている貴社が不思議でなりませんでした。数年前には本社ビルも建て直され、支店も広く展開されているご様子。何でこの厳しい時代に、この会社は元気なんだろう、と。ある時などは失礼と思いつつ、信用調査会社から貴社の情報を取り寄せたりもしましたが、その内容、その数字には、ただただ目を見張るばかりでした。
 そして私なりに、貴社の成長の鍵が『職場の教養』という冊子を使った活力朝礼にあるのではないかと思い、自社において今まで以上に朝礼に磨きをかけてやってきました。それなりの成果は上げられたものの、いまひとつ満足するには至りません。我社と貴社とどこが違うのか。我社に欠けているものは何かと突き詰めて考えてみますと、決定的なそれは『地域貢献』という点であると気づきました。今日、恥を忍んで無心に参りましたのは、貴社が毎朝、朝礼後に取り組まれている道路清掃の一部を、我社に任せていただけないかということなのです」
 そう言って、二人とも深々と頭を下げました。M社長はその申し出をとても喜び、自分たちはまた別の区域での清掃に励ませていただこうと心を決めたそうです。
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 道路清掃を始めた当初は、周囲から変な会社だと白い眼で見られたM建設。「この売名行為はいつまで続くか」と陰口を叩かれるなどの辛い思いも味わったようです。
「私たちにも、良いことをしているんだという自惚れがあり、褒められたい、認められたいという心が正直ありました。しかし毎日毎日続けているうちに、そのような気持ちはだんだんと薄れていき、いつの間にか清掃をすることが日常の中で当たり前になってきたように思います。『いつまで続くやら』という周囲の中傷も、かえって皆が一致団結する後押しとなって今日まで来られました」
 M建設では長年にわたる清掃の実践によって、自動車の事故、現場でのトラブル、お客様からのクレーム等が極端に少なくなり、全社員が相手の立場になって物が考えられるようになったということです。
 たかが清掃、されど清掃です。当たり前と思える事柄をおろそかにせず、誠心誠意、心を込めて取り組んでいくとき、そこに新しい道が拓けるのかもしれません。まちがっても、「やっているつもり」という惰性に流されず、今日一日の心でやり抜きましょう。

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