2008年4月4日金曜日

今週の倫理 (553号)より 自己責任の意識が事態を好転させる

釣好きのN社長が初めて遊漁船F丸に乗船した時のことです。最初のポイントに着き、さっそく釣りを始めましたが、まったく当たりがありません。 船長はポイントを次々と移動しましたが、やはり結果は同じです。そこで船長は最初のポイントに船を戻しました。

ところが、そのポイントには他の遊漁船が数隻入っており、割り込むスペースはありません。しかも次々と魚が釣れているではありませんか。

結局その日はたいした釣果もなく、納竿の時間となりました。N社長は忙しい中でようやく取れた休みだっただけに、残念でなりません。「船長が最初のポイントでもう少し粘っていてくれたらなあ」と、つい船長への不満が生じた時のことです。船長が突然マイクで釣り客に詫び始めたのです。

「皆さん、今日は本当に申し訳ありませんでした。最初のポイントでもう少し粘ればよかったのですが、私の完全な判断ミスです。お土産を用意しておきましたので、今日はこれで勘弁してください」
釣りはその日の潮温、潮の流れなどの気象条件で釣果が大きく左右されます。釣り客はこのことを周知していますから、釣れなくても皆納得するのですが、今回のように船長が自らの判断ミスを詫びるというケースは稀といっていいでしょう。N社長は船長の責任感の強さにすっかり惚れ込んでしまい、以来その遊漁船の常連となってしまいました。

家庭生活においても仕事の面でも何か困った問題が生じると、ついその原因や責任を他に転嫁してしまいがちです。
子供に何か困ったことが生じると、夫は妻に「子供のことはお前に任せてあっただろう。お前が甘やかせてばかりいるから」と妻を責めます。妻は夫に「何もかも私に押し付けて、あなたは何もしてくれないじゃない」と夫を責めます。

社員の定着率が悪いと「俺がせっかくここまで育ててやったのに、この恩知らずが!」と社員を責めます。
なぜこうなるか。「自分は精一杯努力をしている。自分は悪くない。すべて原因は相手にある」という心の状態に他なりません。そしてその心の奥には、「人にとやかく言われたくない」「傷つきたくない」などの自分自身を擁護し、甘やかす思いが潜んでいると言えるでしょう。

「君に任せてばかりで悪かった。これからは私も子供に心を向けるようにしていくよ」「私も不足不満ばかりでごめんなさい。これからはもっとすなおな気持ちであなたに相談していきます」「辞めた社員が悪くはない。経営者として自分が至らぬからこそ辞めていったんだ。本当に申し訳ない」こんな心になれた時に事態は好転していくのです。

問題が生じるということは、そこには様々な原因があります。しかし最終的には「自分の周囲に起きたことは己の反映であり、己が向上するチャンスである」と受け止めて善処していきましょう。そこには必ずや明るい舞台が用意されているのです。

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