2009年4月3日金曜日

今週の倫理 (606号)より 花の咲かない寒い日は下へ下へと根を伸ばす好機


新年度を迎えても経済状況は依然厳しい状況です。しかし、こんな時だからこそ、気持ちだけでも明るく前向きに保たないと暗い時代に飲み込まれてしまいそうです。

人は目の前の現象に心を動かし、事象によって明るくなったり、暗くなったりします。明るく前向きになるような「感動」の出来事であれば良いのですが、暗く不安な「動揺」する出来事もあります。百年に一度の大恐慌などと耳にすれば、不安や恐怖に駆られる人も多いはずです。

ましてや、メインの取引先が倒産した、売上げや注文が激減した等々、現実問題として自社に問題が振りかかった場合、落ち着いてはいられませんし、飛んできた火の粉は払わなければなりません。眼前に課題が迫ったとき、右往左往するか、どっかりと課題に正対できるかどうかは、経営者の力量、つまり経営者自身の日頃が問われるといっても過言ではないでしょう。

NHKテレビ三月二十二日放映の「経済羅針盤」に出演した伊那食品工業会長の塚越寛さんは、『年輪経営』という著書を出版し、サラリーマンや経営者の間で注目を集めています。年輪経営とは「急成長を求めない、身の丈にあった成長を求める経営」をいいます。加えて「会社を取り巻く全ての人を幸せにしたい」という、祈りにも似た信念を実現するよう日頃から努力を惜しまない氏の姿が印象的でした。

氏は二宮尊徳の「遠くをはかるものは富み 近くをはかるものは貧す それ遠きをはかる者は百年のために杉苗を植う。まして春まきて秋実るものにおいてをや。故に富有なり。近くをはかる者は 春植えて秋実るものをも尚遠しとして植えず 唯眼前の利に迷うてまかずして取り 植えずして刈り取ることのみ眼につく。故に貧窮す」を座右の銘とし、好景気のときも不況時に備えることに手を抜かず、「好景気があれば必ず不景気がある。だから、遠くを図ることを日頃から忘れてはならない」と、日常の重要性を強調しています。

具体的な事例として、研究開発に力を注ぎ、新規開発商品をプールしておく。毎年一つずつ新商品を発表できるように新商品の発表時期も慎重に検討する。社員の福利厚生を充実させるなど、言行一致を心がけています。現在の繁栄は、「どうしたらこの会社が永続するかを基準に、身の丈にあった成長を求め、遠きを図り、信念を持って実践躬行を繰り返した結果。何も特別なことはしていません」と謙虚に語ります。

倫理運動の創始者・丸山敏雄は、「事業は憂えるから崩れる。(中略)うれえるの反対は、喜ぶことである。希望に燃えること、信ずることである」と、日頃から遠きを図り、信念を持ち続ける秘訣は喜ぶことだと述べています。喜ぶ第一歩は、全ての事象現象を「これがよい」とありのままに受け容れる心境を養うこと。倫理経営はそこから始まります。

大恐慌といわれる時代を「これがよい」と、ありのまま受け容れ、腰を据えて自身と自社の改革に取組む好機とし、経営者としての信念を深め培うチャンスと捉えましょう。日頃より遠きを図り、きっと出来るぞ、きっとやるぞと動かぬ信念を練り固め、どんな時代にも強靭でしなやかに環境に適応する会社を創りあげていきましょう。

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