2007年12月5日水曜日

今週の倫理 (536号)より 変化に対応できる組織こそが生き残る

「意識改革」は、いまや経営者の集まりにおいて、必ず話題に上る言葉です。「ウチの社員は意見が少ない」「危機意識が足りなくて」「社員の意識改革を急がねば」など、悲観的な会話を耳にすることも少なくありません。
現実に、旧態依然の経営から脱却できず、売り上げ目標の達成意識が低下し、やがて淘汰されていった企業の話は多く聞くことでしょう。
 多くの経営者が、このままでは倒産を招いてしまうとの危機感から、何とか社員の意識を変えなければと考えています。そこで、自ら「経営者セミナー」に参加したり、講師を招いての社員教育を実施するなど、その取り組みも必死です。
そのようにして意識改革に成功した企業は、急激な経営環境の変化にも対応できる強い組織力を回復し、順調に売り上げを伸ばしています。そうした企業の主な共通点は、経営者自身の姿勢の変化にあるように思われます。
 ある地方で、自動車修理・販売を手がけるT社長。業界の不況を嘆く前に、いかなる経営環境の変化にも対応できるよう、組織力を強化していく必要があると考えていました。そしてそのために、従業員一人ひとりが自らの仕事に誇りを持って積極的に取り組むよう、自身がいかにリードするかを考えていました。
 T社長は、まず自ら〈ウチの会社は、県下のオーナードライバーのために、この点で絶対に必要だ〉と強く思い込めるよう、徹底的に自問自答しました。そしてさらに「絶対に必要だ」との信念を固めるために、従業員をはじめ来店するお客様に対して、一切の態度を自分中心から相手中心に変え、加えて機械や工具等に対しても丁寧な態度で接するように努めたのです。
 やがてT社長は、〈ウチの会社は、県下のオーナードライバーに、絶対に喜んでもらえる〉という信念を持つに至り、そこで従業員にも自社の存在意義について話し合う習慣を、作りあげていったのです。最初こそ、消極的な意見が出たりしていたのが、徐々に建設的な意見が多くなってきました。現在では、お客様に対する態度、物の扱い方、仕事場のあり様など、自分たちで話し合い、決まったことはすぐに実行に移しているのです。
 それに比例して利用客も増え、遠くからも来てくれるようになり、売り上げも伸びたということでした。T社長は今、「意識変革についての思いが経営には大切だ」と語っています。
 進化論を唱えたダーウィンは、「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一、生き残るのは、変化できる者である」という教訓を残しています。いかなる経営環境下にあっても、変化できる組織であれば生き残ることができると信じる。そして自己変革に本気で取り組み、得た信念のもと社員の意識改革に取り組んでいくことこそが、最も大切な道程なのです。   

0 件のコメント: