2009年2月13日金曜日

今週の倫理 (599号)より 変革の絶好機 待ってました不況!


大手企業の派遣社員が大量にカットされ、各企業の業績予測も下方修正一辺倒の報道が連日なされ、「百年に一度の大不況」というフレーズまでもが喧伝される昨今ですが、この経営環境の厳しさをどう捉えるかは、経営者によって様々のようです。

ある社長は経営を「凧揚げ」に譬えます。
「風がビュービューと吹いて、凧の紐を握ってさえいれば、凧が大空にグングンと昇っていった、バブルの頃とは打って変わり、今は全くの無風状態。この時期、凧を揚げるためには、凧の紐をしっかりと握り、社長を先頭に全社一丸となって前に向かって、まっしぐらに突っ走り、自ら風を起こす以外に道はない。しかもその際には、バブル時には見向きもせず、或いは気がつかなかった自社に潜む改善点を、たくさん見つけることが出来、そこに手を打つのにも絶好の機会です。待ってました不況ですよ!」

また、「企業は創業と同時に〔倒産エネルギー〕を宿命的に内包し、これと対極にある〔成長エネルギー〕が、それを上回ることにより、企業の維持・発展へと向かう」と指摘する人もいます。

そもそも企業というものは、創業時は物質的、資金的にも潤沢ではなく、創業者の熱意・誠意・創意だけで幾多の困難な状況を潜り抜けて、現在に至っているものです。植物になぞらえて考えると、人為的につくられた鉢植えの植物と同様に、企業も日頃から、丹精込めて手をかけて注意深く育てていかなければ、環境の変化に対応できず、いずれ存続できなくなってしまいます。それを阻止するには、あたかもこまめに肥料や水をやったりして育てた後に、鉢植えの植え替えを行なうように、企業にとっても日頃の「改革」が不可欠となります。

よって、この経営環境が厳しい時期こそ、堅持すべき軸(創業の精神等)と、変革すべき事柄(手段・方法等)をしっかりと見極めながら、それをトップが率先して取り組む中で、活路が見いだされるものです。
松下幸之助氏は「3パーセントの経費節減は往々にして頓挫しがちだが、三割の経費節減は意外と成功する」ということを述べています。常識とは逆とも思えるこの発言の意味するところは、3パーセントのコストダウンをしようとすれば、現在の延長線上での発想しか生まれず、三割のコストダウンを目指すことで、発想の大転換を余儀なくされ、すべてを根底から見直して様々な改革が可能となるというものです。
倫理研究所の創設者丸山敏雄は、「純粋倫理」に則った生活を、一言で「捨てる生活」と表しています。これは経営者が日頃その判断・決断を行なう時に、「固定観念」や「執着心」、そして「自己中心の我欲」などを捨てることが大切、という教えです。

現在のような厳しい時期だからこそ、経営者は企業における改善・改革はもとより、知らずしらず身に染み付いた精神的な贅肉を削ぎ落とし、この難局を乗り越えるのみならず、企業の「成長エネルギー」の源泉を、今一度確認する機会としたいものです。

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