2009年2月27日金曜日

今週の倫理 (601号)より 不況は成長のチャンス逃げずに立ち向かおう


日本は今、欧米の金融危機による輸出急減が原因で、ひどい「経済危機」に陥っています。株価は下落し、中小企業においては、資金繰りに行き詰まる状態にあります。当然、経営に不安を覚える経営者も、少なくはないでしょう。

 しかし、いかに未曾有の経済危機とはいえ、すべての企業が倒産するというものではありません。もともと経済は生き物であり、好・不況を繰り返すものなのです。そこで忘れてならないのが、今ある企業はどこも、様々な危機を乗り越えてきた過去があるということです。経営とは変化対応業とも言われます。社長を中心に、幹部社員から一般社員に至るまで一丸となって、これまでの経営環境の変化に対応してきたからこそ、今日があるわけです。

 企業の危機は、経営環境の変化といった外圧によって生じるというより、内部のまとまりに欠けた結果、変化に対応できなくなって起こると言われます。それだけに、経営者の誰もが、組織に緩みが出ないように気をつかっているものです。

しかしそれでも、経営が順調に伸びていたり、あるいは好況時には、社員の働く意識は緩慢になりがちになるようです。社長がこれを引き締めようと、いくら激をとばしても、なかなか思うようにはならないというのが実情です。

 これが不況時になると、社員にも危機感が出てきて、不況克服のために、自らの働きに真剣に取り組むようになってくるものです。このときこそが、「課題を発見し、自分の能力を最大限に発揮してそれを解決し、しかも自分の目標を自発的に達成しようとする社員」を育てることができるのです。
 ある地方で製造業を営むM社長は、昨今の世界同時不況や円高、台頭する中国の影響などに翻弄されて、業況は厳しい状態に陥っていました。

そのような時に誘われたセミナーで、「社長が一人で悩まないで、全社員に実情を伝え、会社の存在意義とは何かを考えさせることが大切だ。そしてそれを達成するためには、組織のあり方から製造機械の設置の仕方に至るまで、話し合わせること」と学んだのでした。

M社長はさっそく、社員の全員を召集して、話し合いに取りかかったのです。この話し合いは、社長も一般社員も同じ立場で進めました。仕事が少ない分、話し合いの時間が多くなっていきました。
話し合いを始めて二カ月が過ぎたころ、社員の表情はすっかり変わっていたと言います。これに比例するかのように、社風が変わり、注文も予想外のところから、持ち込まれるようになったのです。

「不況をこわがってはいけない。不況から逃げてはいけない。むしろこれに立ち向かい、社内のゆるみを引き締め、改善すべき点を徹底的に改善していくことが大事だ。不況のときこそ、身にしみてほんとうの勉強ができるいい機会だということである」(『松翁論語』)

 また「苦難は幸福の門」との教えもあります。今回の不況に、経営者としての在り方を学び、社員とともに次の繁栄のステージに踏み込んでいきましょう。

0 件のコメント: