2007年10月24日水曜日

今週の倫理(530号)より 社員を怒鳴りつける経営者の皆様へ

経営者のT氏が、タクシーを利用したときのことです。運転席の背に、乗客が自由に持ち帰ることができるA6版の小冊子がはさんでありました。人材派遣会社の広告用冊子です。日頃、社員の育成に頭を悩ませている氏は、思わず手に取りました。
題して『週に2回以上社員を怒鳴りつける経営者の皆様へ』(株式会社ワイキューブ)。冊子を開くと、左ページには「今日の一喝」というタイトルで文言が並んでおり、対する右ページには一喝をした経営者への戒め的な回答が載っています。
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【左ページ】
a「同じことを何度も言わせるな! もっと頭を使え!」
b「ダラダラするな! やる気を見せろ!」
c「少しはお客様の気持ちになって考えてみろ!」
それらの言葉を放ったとする経営者へのコメントが、非常にドライです。
【右ページ】
aへの回答…それは言うだけ無駄です。極端な話、バカな人に「賢くなれ」と言ったところで、そんなことは不可能です。
bへの回答…残念、いくら尻を叩いても、本人が決めた目標を、他人がムリヤリ上げることはできません。
cへの回答…それは酷な話です。コミュニケーション能力の低い人に、相手の気持ちは読めません。
結論…育たない人材は、どれだけ時間をかけたところで育ちません。その人材が「できる」かどうかは、採用段階で100%決まっているのです。
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人材派遣会社の広告的文章でもあり、極端な表現だとは思ったものの、T氏は経営者としての自分の姿を思い起こしました。
確かによくよく考えてみると、社員を採用したのはトップである社長本人です。裏を返せば、有能な社員に恵まれないのは、自分自身に見る目がなかったということになるのです。「良くも悪くも、社長である自分の目にかなった人材が会社に集まっているのだ」と思ったT氏。それだけで少しは気が楽になったといいます。
社員の成長のためには、研修や教育も必要です。また、目に余る行為については苦言も必要でしょう。その結果、これまで役に立たないと思っていた社員が、何かのきっかけでガラッと変わるケースもあります。しかし根本としては、「他人」を無理に変えようとしても変わらないものです。
「自分が変われば相手は変わる」という言葉に基づいて、自分が変わろうと真摯に実践した結果、どうしても変わらない相手には、相手に対する「見方」を変えるしかないのです。「ノロマだと思っていたが、裏を返せば慎重な性格だ」「細かい作業ができない=おおらかな性格なんだ」等々です。
強い精神力を持つ経営者になりたいと思ったTさんは、「すべては自己責任」「社長も人間、社員も人間」という言葉を噛みしめ、他人のせいにしないということを改めて心しました。

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